人工関節置換術の合併症にはどのようなものがある?合併症の予防方法について
人工関節置換術には痛みを和らげ日常生活の動作が円滑におこなえるというメリットがあります。
しかし稀ですが合併症を発症する可能性があるというデメリットもあります。合併症は手術をおこなったことによって起こるものなので、どの医療機関でも起こる可能性があります。
「人工関節置換術を受けたいけど合併症が不安……予防方法を知りたい」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、人工膝関節置換術と人工股関節置換術の代表的な合併症である、感染、血栓症・肺塞栓症、脱臼、骨折、人工関節のゆるみについて予防法とともに解説します。
人工関節置換術の合併症【感染】
人工膝関節置換術と人工股関節置換術の術後、特に疑問点が多いのが歩行についてといわれています。
人工関節の手術において、最大の合併症といえるのは感染です。発症率は0.5〜3.0%といわれています。感染は人工関節に細菌などが感染してしまう合併症です。手術中に細菌に感染してしまう場合や、手術後にむし歯などによる口腔内の細菌、皮膚の傷や水虫などによって引き起こされる場合があります。
糖尿病や関節リウマチの治療をしている方や、ステロイド治療を受けている方は感染を引き起こす可能性が高いといわれています。そのため、手術前にご自身の体の状態をしっかりと主治医に伝えるようにしましょう。また、手術前に歯の治療や水虫の治療も受けるようにしてください。
二次的な感染を起こすリスクは高くありませんが、手術をうけた方がむし歯や水虫になってしまった場合、放置することなくきちんと治療することが大切です。風邪などを引いてひどく体調を崩し免疫力が低下した状態ではリスクが高まるといわれています。日頃から体調管理を心がけるようにしましょう。
人工関節置換術の合併症【血栓症・肺塞栓症】
人工膝関節置換術や人工股関節置換術の手術中・手術後に、主にふくらはぎの深部静脈という足から心臓に血液を戻す血管のなかに血栓という血のかたまりができることがあります。
この状態を深部静脈血栓症といい、脚がむくんだり脚に痛みが走ったりします。
さらに、血栓がはがれて血流にのって移動し、肺の血管を詰まらせることがあります。これを肺塞栓症といい、一般的にエコノミークラス症候群として知られています。肺塞栓症は突然死してしまうこともある命に関わる合併症です。
発症することは極めて稀で、本邦では発症率0.2%以下といわれていますが、いったん発症してしまうと突然死してしまうこともあり予防することが非常に重要です。
予防方法として、血栓予防のストッキングを使用し、ふくらはぎをマッサージする器械を装着、さらに血液が固まることを防ぐ薬を内服します。また、術後は脚(特に足関節)を動かすことがいちばんの予防になるので、離床するまでは積極的に脚を動かすことを心がけましょう。
人工関節置換術の合併症【脱臼・骨折】
脱臼は人工股関節置換術の術後、関節周辺の筋肉が安定するまでのあいだ、転倒や無理な姿勢を取ったりすると起こる可能性があります。一般的に術後3週程度すると筋肉などが安定してきます。
関節周辺の筋肉が安定していれば脱臼が起こる可能性はほとんどなくなります。この間、理学療法士の指導のもと適度な筋力トレーニングを行うのがよいでしょう。また、手術方法により脱臼肢位は異なるため主治医に確認してみましょう。
骨折は人工関節置換術の術後に転倒することで起こる可能性があります。特に女性の場合、骨粗しょう症となっている方も少なくないため注意が必要です。骨粗しょう症を合併している場合、骨折のリスクは高まるため治療を開始するようにしましょう。
手術後は歩いたり外出したりする機会が増えてきます。その際に転倒して脱臼・骨折をしてしまったという方もいらっしゃいますので、転倒には十分注意してください。
人工関節置換術の合併症【人工関節のゆるみ】
人工膝関節置換術や人工股関節置換術の術後、人工関節を長い年月にわたって使用していると、人工関節と骨との間の接着面にゆるみが出て、痛みや歩行障害につながることがあります。
人工関節のゆるみは人工関節に負担がたまることで発生します。主な原因として過度な体重増加、重たい荷物を持つ、激しいスポーツを繰り返すことなどがいわれています。
そのため、適度な体重を保つように食生活に気を付ける、無理をしないなど、日常生活で人工関節に負担をかけないように心がけてください。
また、人工関節のゆるみは自覚的な症状がほとんどないため、ご自身で気付くことはなかなかありません。主治医の指示に従い、定期健診を受けるようにしましょう。
まとめ
今回は、人工膝関節置換術と人工股関節置換術の代表的な合併症と予防方法について解説しました。
人工関節置換術の合併症にはさまざまなものがありますが、その発症率はかなり低く、手術前から手術後にかけてきちんと対策していれば、まず発症することはありません。
しかし、体の状態は個人個人で大きく異なるため、思わぬ合併症が発症するリスクは必ず存在します。人工関節置換術を受ける際に不安なことがあれば、どのような細かいことでも主治医に相談するようにしましょう。