変形性股関節症の人工関節とは?手術の特徴と注意点を詳しく解説
変形性股関節症は、変形性膝関節症に次いで多くの割合を占める関節症であり、痛みに悩んでいる患者様が多数存在します。しかしなかなか手術に踏み切れずに徐々に関節症が進行し、強い痛みを抱えたまま日常生活を送っている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、変形性股関節症の症状や病態をご紹介したうえで、人工股関節の特徴や術後の経過についてご説明します。人工股関節は痛みを劇的に改善する有効な手段ですので、快適な日常生活をおくるための一案としてぜひご覧ください。
変形性股関節症とは
変形性股関節症とは、大腿骨の骨頭と骨盤の臼蓋と呼ばれる受け皿によって構築される股関節の軟骨がすり減ることで、痛みや関節変形が生じる疾患です。変形性股関節症は40~50歳代の女性に多く、臼蓋形成不全と呼ばれる生まれつきの関節疾患をもつ方に多く発症します。
- そのほか変形性股関節症の原因は以下のとおりです。
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- 先天性股関節脱臼
- 大腿骨と骨盤の衝突(インピンジメント)
- 肥満や長時間の立ち仕事などの生活歴
診断は股関節の症状や動かせる範囲(可動域)、そしてレントゲン検査によって股関節の軟骨の状態や骨棘という骨の変形の有無を確認しておこないます。症状はまず脚の付け根の違和感や痛み、腰部痛や大腿部痛からはじまります。進行すると痛みが感じる時間が長くなり、靴下や爪切りに不自由さを感じ、歩行時に跛行を伴います。また夜間痛も認めるようになります。
股関節は球関節という別名をもつように球状の形をしているため、関節の変形が進行することで円滑な動きが損なわれてしまい、可動範囲が小さくなってしまいます。軽症であればリハビリテーションなどの運動療法によって痛みが緩和することもありますが、進行することで強い痛みに悩まされる患者様が多いのが現状です。
変形性股関節症の人工関節とは
変形性股関節症の手術治療法のひとつとして、人工股関節全置換術(THA:Total Hip Arthroplasty)という方法があります。傷んだ股関節を人工の関節に置き換える手術です。股関節をほぼ完全に再現できるため回復度、満足度とも非常に高い治療法です。
人工関節の素材は主にチタン合金が用いられ、関節面には摩耗(すり減り)の少ないポリエチレンやセラミックなどが使用されています。骨盤の寛骨臼にカップと呼ばれる股関節の受け皿を固定し、大腿骨にはステムという芯棒を挿入する手術です。骨盤側、大腿側とも人工関節との固定には接着剤としてセメントを使用するタイプと使用しないタイプがあり、変形の度合いや年齢を考慮し選択されます。
一般的に手術直後は股関節へ強い衝撃が加わらないよう注意しなければなりませんが、素材やデザインの進歩により以前とは比較にならないほど耐久性は向上しています。また人工股関節の手術方法自体も改良され、より身体に対する負担が少ない手術法が普及してきています。人工股関節特有の合併症であった脱臼リスクも以前と比べ低くなってきています。しかし理論上、100%防げるわけではないので手術方法や脱臼肢位も含め専門医に相談するとよいでしょう。
人工股関節の対象
人工股関節の対象は一般的に関節の変形が進行し痛みを感じる時間が長くなり、日常生活動作が制限されている方が対象となります。しかし最終的な根治療法なので、他の治療法(リハビリテーションなどの保存治療や骨切り術などの関節温存手術)が無効な場合にのみ行われます。症状や変形の程度、年齢や生活レベルなどに応じて関節温存手術といった他の手術方法が適応になる場合もあるため、専門医の診察を受けて相談してみてはいかがでしょうか。
手術後の経過
人工股関節の術後、約1~2週間の入院期間を経て自宅退院するケースがほとんどです。基本的に術直後からリハビリを開始し、平行棒や歩行器を使用して立ち上がり練習や歩行訓練、可動域訓練をおこないます。
荷重制限は無く、歩行状態が良好であれば手術翌日から歩いてトイレへ移動することも可能です。そして動作レベルに応じて歩行器から杖へと移行し、積極的に歩行練習をおこないます。自宅退院が近づいてくると、自宅でできるセルフトレーニングの指導や術前に難しかった靴下や爪切り、浴槽またぎや和式トイレなど日常生活動作の確認を行います。
まとめ
本記事では変形性股関節症の症状や病態、そして人工股関節全置換術についてご紹介しました。人工股関節は強い痛みを劇的に改善し、股関節をほぼ完全に再現できるため回復度、満足度とも非常に高い治療法です。ただし最終的な根治療法となるため手術内容への理解が必要です。股関節痛で悩んでいる方は、ぜひ一度専門医に相談してみることをおすすめします。