変形性膝関節症とは

変形性膝関節症とは大腿骨と脛骨、そして膝蓋骨によって構成される膝関節の関節軟骨がすり減ることで痛みが生じる疾患です。症状は痛みの他にO脚や稀にX脚、膝関節の腫れや熱感、そして関節の変形が進行すると膝の引っ掛かりが生じることもあります。

女性は閉経後のホルモンバランスの乱れによって骨粗鬆症になりやすいため、ともなって変形性膝関節症を患いやすい傾向にあります。保存治療としては痛み止めの内服や関節注射、そして運動療法などのリハビリテーションが適応となりますが、関節軟骨のすり減りはもとに戻ることがないため、保存治療のみでは痛みの緩和が困難な場合もあります。

対して変形性膝関節症の手術は除痛効果が大きく期待できるため、人工膝関節置換術は年間9万件以上おこなわれています。手術治療として人工関節のほかには、軽度の症状に対する関節鏡手術や、40～60歳代と比較的若い年代の方に対する膝関節周囲骨切り術と呼ばれる手術方法があります。

同じ変形性膝関節症であってもさまざまな手術方法があるため、担当医と相談してご自身に合った術式選択が、理想の生活を続けるうえで重要となります。

人工膝関節の種類

変形性膝関節症に対する人工関節の種類は、大きくわけて以下2つあります。

• 人工膝関節全置換術（TKA）
• 人工膝関節単顆置換術（UKA）

手術方法だけでなく適応する症状や所見、予後も異なるのでぜひご確認ください。

人工膝関節全置換術

人工膝関節全置換術（TKA:Total Knee Arthroplasty）とは、大腿骨と呼ばれる太ももの骨と膝下の骨である脛骨、そしていわゆるお皿といわれる膝蓋骨で構成される膝関節を人工関節に置き換える手術です。

多くの割合で大腿骨と脛骨の間の関節軟骨がすり減ることで関節変形が生じるため、同部だけ人工関節になるケースがほとんどです。しかし膝蓋骨と大腿骨で構成される膝蓋大腿関節と呼ばれる関節が変形している場合、人工関節に置き換えられることがあります。

そして膝蓋大腿関節に対して人工関節置換術をおこなうかどうかは、症状やレントゲン検査によって決定します。手術の流れとしては麻酔後に皮膚を切開し、人工関節を置き換えるために大腿骨と脛骨の骨を切除します。

切除した部分に金属とポリエチレンでつくられたコンポーネント、いわゆる人工関節を設置するといった手順です。手術時間は約1時間～1時間半ほどでおこなわれます。

手術翌日から立位訓練や歩行訓練など体重をかけたリハビリテーションが始まり、術後2週間前後で自宅退院できるようになります。

人工膝関節単顆置換術

人工膝関節単顆置換術（UKA:Unicompartmental Knee Arthroplasty）とは、膝関節の変形した部分だけを人工関節に置き換える手術です。膝関節は主に大腿骨と脛骨によって構築されているのですが、さらに内側と外側の関節に分類することができます。

たとえば変形性膝関節症によってO脚になってしまった場合、軽症であれば膝関節の内側のみ変形し外側は綺麗な関節で保たれている場合があります。変形している膝関節内側だけを人工関節に置き換える場合、人工膝関節単顆置換術が適応となります。

手術をしない外側は従来の関節面で保たれており切開範囲が少ないことから、人工膝関節単顆置換術には以下のようなメリットがあります。

• 手術後の腫れが少ない
• 回復が早い
• 膝が曲げやすい

手術前の状態にも左右されますが、人工膝関節単顆置換術は人工膝関節全置換術に比べて膝関節の曲がる角度が大きい傾向にあります。さらに手術による侵襲が少ないだけでなく、身体本来の人体や骨が残存するため術後の経過も良好なケースが多い傾向にあります。

そのため、人工膝関節単顆置換術後は1週間～2週間で自宅退院できるようになります。

まとめ

本記事では変形性膝関節症の症状や現状、そして治療方法の1つでもある人工関節についてご紹介しました。人工膝関節置換術は除痛効果が大きく期待できますが、手術には大きな不安と痛みがともなうため、あと1歩が踏み出せない患者様が多いのが現状です。

しかし人工膝関節単顆置換術のように侵襲が少なく痛みを最小限におさえた術式も存在します。今後の人生を辛い痛みと共存するよりも一度専門医の診察を受け、適切な治療によって痛みの無い余生を送ってみてはいかがでしょうか。