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一度の手術で一生使える?人工関節の寿命と長持ちさせる方法を解説

手術によってひざや股関節を人工関節に置き換えた場合、その人工関節はどのくらい使えるのか、一度手術をすれば一生使えるのかなど、人工関節の寿命(耐用年数)について疑問や不安を抱く患者さんは多いと思います。

そこでこの記事では、人工関節の寿命や長持ちさせる方法について詳しく解説します。

人工関節の寿命はどのくらい?

人工関節の寿命は、関節の状態や日常の活動量などによって異なりますが、一般的には15~20年といわれています。

しかしこれは20年前に使用されていた人工関節が、現在寿命を迎えていることからいわれている数字です。現在使用されている人工関節は、20年前と比べ素材の品質や耐久性が飛躍的に向上したためより長期の成績が期待できます。

実験のデータでは50年とも100年ともいわれています。ですがこれらのデータは実際に人体に使用されて経過した時間ではありませんので注意が必要です。

また、手術後に過度に激しいスポーツ(マラソンや格闘技など)をすると耐用年数が短くなるといわれていますので、これらのスポーツを継続される方はそのリスクを念頭に定期検診をしっかり受けることが重要です。

人工関節の手術を受けられる年齢

以前は手術によって埋め込まれた人工関節を再び入れ替える手術(人工関節再置換術)は初回手術より大がかりとなり、患者様の体への負担も大きいため基本的には一回の手術で一生もたせることを考慮し、60~65歳以上が手術の対象となっていました。

しかし、現在では手術方法や手術器械の改良により人工関節再置換術は以前より困難な手術ではなくなってきています。そのため30代や40代であっても人工関節以外に有効な治療法がなく、再置換術の可能性を了承されれば年齢の制限を設けず手術を行う施設も増えてきています。

逆に年齢の上限はありません。脳や心臓、肺などに大きな病気をお持ちでなく、手術に耐えられる体力があれば何歳でも手術は受けられます。90歳以上で手術を受けられた方もいらっしゃいます。そのため「もう歳だから……」などと考え、高齢が理由で手術を諦める必要は全くありません。手術によって日常生活を取り戻し、元気で楽しい毎日を送っている高齢者の方はたくさんいます。

人工関節の寿命が延びている要因

人工関節の寿命は年々延びています。その要因の1つは人工関節に使われる素材の進化です。

例えば股関節の場合、大腿骨(だいたいこつ)の上端に骨頭(こっとう)と呼ばれる球状の関節構成体があり、骨頭は大腿骨の寛骨臼(かんこつきゅう)と呼ばれるソケット状のくぼみにはまり込むような構造をしています。【図1参照】

股関節の構造

人工関節は、大腿骨の上部(ステム)や寛骨臼(カップ)の部分にコバルトクロム合金やチタン合金など、衝撃や摩耗に強い金属が使われています。

また骨頭の部分は、摩耗に対する耐久性を向上させたアルミナやジルコニアなどのセラミックス、関節の動きを滑らかにする軟骨(ライナー)の部分は超高分子量ポリエチレンという特殊な素材が使われています。【図2、3】

人工関節の構造
人工関節に使われている素材

こうした素材の開発によって人工関節の耐久性や機能性は向上しており、人工関節の寿命は今後もさらに延びると期待されています。

また、手術方法も進化しており、骨を切る位置や量、人工関節を設置する角度などをAI(人工知能)で正確に測定したり、3Dプリンターなどで一人ひとりに合ったオーダーメイドの人工関節をつくったりする技術が開発され多くの施設で導入されています。最近では、AIや手術支援ロボットなどを融合した、未来型の人工関節や手術法の研究・開発も進められています。

人工関節の寿命を延ばす生活習慣

人工関節の寿命は確実に延びていますが、過度の負担は耐用年数を短くすることがいわれています。人工関節を受ける方の理由はそれぞれ異なります。

スポーツ活動をもっとやりたい、もっと旅行に行ってたくさん歩きたい、とにかくひどい痛みから開放されたい、など個々人によってその理由は様々です。それぞれの方がライフスタイルに応じて人工関節の寿命を延ばす最適な方法を主治医と相談していきましょう。

以下は一般的に以前よりいわれている人工関節に負担をかけない生活習慣です。

スポーツや肉体労働などを行わない方に適した生活習慣で、最も人工関節を長持ちさせるといえるでしょう。

  • 寝具は布団よりベッドを使う。
  • リビングや茶の間では、座椅子よりソファーに腰掛ける。
  • 和式のトイレよりも洋式のトイレを使う。
  • 関節への負担を軽減するため肥満の解消を心がけ、適正な体重を維持する。
  • 無理のない範囲で運動し、筋力を維持する。

逆に比較的若年で、激しいスポーツ(マラソンや格闘技)などをもっと楽しみたいという方については特に制限を設けない施設が最近多くなってきています。先述したように過度の負担は人工関節の耐用年数を短くすることがいわれていますが、そのリスクを承知した上で定期検診をしっかり受診されることが重要です。

まとめ

人工関節の寿命は、素材の開発や手術技術の向上にともない、以前と比べれば格段に長くなっています。痛みで苦しむこともなくなり、健康寿命を延ばすことにもつながっています。

しかし、人工的に作られたものである以上、寿命に限界があることも事実です。それぞれのライフスタイルによって人工関節の寿命も変わってきます。ですが、手術をうける理由は個々人によって異なるため、人工関節を長持ちさせる方法、目的もそれぞれ異なるでしょう。

辛い痛みから解放され、やりたいことやできなかったことができるようになる非常に有効な治療法です。それぞれの方がライフスタイルに応じて人工関節の寿命を延ばす最適な方法を主治医と相談していきましょう。

人工関節置換術のご案内|康心会汐見台病院/神奈川県横浜市