人工関節の可動域とは?人工関節の手術で改善できる関節の動きを解説
変形性関節症や関節リウマチなどの疾患により、痛みが生じたり動きが悪くなったりした関節の機能を改善するために、ひざや股関節を人工関節に置き換える手術をおこなう場合があります。
これから手術を受ける方や手術を検討されている方にとって、人工関節に換えることでどのくらい関節の動きが改善するのか、日常生活がどう変わるのかなど、気がかりなことは多いと思います。
そこでこの記事では、人工関節の可動域や人工関節の手術で改善できる関節の動きについて詳しく解説します。
関節の可動域とは?
関節の可動域とは、外から力を加えずに関節を自分で動かすことのできる範囲のことです。
関節を動かせる範囲は関節角度計という器具で計測し、可動域角度という数値で表します。
関節をまっすぐ伸ばした状態を0度として、直角に曲げた場合は90度、もっとも大きく曲げられる角度を最大可動域と呼びます。関節可動域や最大可動域は、関節の部位によって異なります。
例えばひざの関節の場合、ひざを伸ばす(伸展)、ひざを曲げる(屈曲)といった動作を正常な人がおこなった場合、関節の可動域はおよそ0~130度で、最大可動域は130度となります。
【図1参照】
【図1】 膝関節可動域(伸展・屈曲)
股関節の場合は、脚を前後に曲げ伸ばしする動作に加え、脚を真横に動かす動作(外転)、脚を内側に動かす動作(内転)、ひざを曲げた状態で太ももを外側に開く動作(外旋)や、内側に閉じる動作(内旋)といった複雑な動きをします。 【図2、3、4参照】
【図2】 股関節(屈曲・伸展)
【図3】 股関節(内転・外転)
【図4】 股関節(内旋・外旋)
正常な人の場合、こうした動作による股関節の可動域は、次のように表すことができます。
【表1参照】
関節の動き |
可動域角度(正常な人の場合) |
---|---|
屈 曲(曲げる) |
0~125度 |
伸 展(反らす) |
0~15度 |
外 転(外側に動かす) |
0~45度 |
内 転(内側に動かす) |
0~20度 |
外 旋(太ももを開く) |
0~45度 |
内 旋(太ももを閉じる) |
0~45度 |
【表1】 股関節の可動域(参考可動域)
※なお、これらの可動域は健康な人の関節可動域の平均値を表した参考値(参考可動域)のため、絶対的な基準ではありません。
人工関節の可動域
人工関節置換術の手術によって、ひざの関節や股関節を人工関節に取り替えた場合、改善できる可動域の目安は次のようになります。【表2、3参照】
【表2】人工ひざ関節の可動域(目安)
運動範囲 |
可動域角度 |
---|---|
伸展(伸ばす) |
0度 |
屈曲(曲げる) |
120度 |
人工ひざ関節の場合、ひざを曲げる動作(屈曲)の可動域は平均で約120度となっており、ほぼ正常値までの改善が見込まれます。また、手術を受けた人の10%にあたる人が、正座ができるほど改善したというケースもあります。
人工股関節においても、正常値に近い可動域まで改善することが可能です。【表3参照】
また、関節置換手術は年々進化しており、手術とリハビリを組み合わせることで回復できる可動域の範囲は大きくなっています。
【表3】人工股関節の可動域(目安)
運動範囲 |
可動域角度の目安 |
---|---|
屈曲(曲げる) |
90度 |
伸展(反らす) |
10度 |
外転(外側に動かす) |
0~30度 |
内転(内側に動かす) |
0~20度 |
内旋(太ももを開く) |
0~20度 |
外旋(太ももを閉じる) |
0~30度 |
ただし、手術前の関節の状態やリハビリの状況などによって、回復できる可動域には個人差があります。また、医療機関によって可動域の回復目標が異なる場合もありますので、詳しくは主治医にご相談ください。
可動域が広がることで得られるメリット
人工関節の大きなメリットは痛みがとれるということです。手術によって関節の痛みの原因部分を取り除くため、痛みで苦しむことのない日常生活を送れるようになります。
また、関節の可動域が広くなることで、歩いたり体を動かしたりすることが楽に早くできるようになり、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)が向上し、自由で活動的な日常生活を取り戻すことができます。
まとめ
人工関節による治療は日進月歩で進化しています。新しい技術を用いた機種が次々と開発され、手術も患者さんの負担がより少ない方法へと進化しています。
長時間歩くのが困難な方、階段の昇り降りがスムーズにできない方、関節の痛みで日常生活に支障が出ている方などは、手術を受けることでその後の生活や人生が大きく変わるはずです。
日常が変わり行動範囲も広がり、やりたいことができるようになります。みんなと一緒に旅行ができたりスポーツをしたり、行きたかったところへ行けたりするようにもなるでしょう。
近年、人工関節の手術は以前と比べポピュラーなものとなっています。痛みや日常生活に支障が起きている場合、我慢したり諦めたりせず、ぜひ当院にご相談ください。