診療科案内
当院の脊椎圧迫骨折治療とは
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)と脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)とは?
骨粗鬆症という骨のもろい状態があると、尻もち、くしゃみ、心当たりがなくても背骨が折れてしまうことがあります。これを骨粗鬆症性の脊椎圧迫骨折といいます。
閉経後にあたる50歳代から年を重ねるごとに、骨粗鬆症の方は増えてきます。たとえば80歳代の女性の半数以上は骨粗鬆症の状態だろうといわれており、脊椎圧迫骨折が起きやすい状態といえます。
骨粗鬆症性の脊椎圧迫骨折の治療は?
痛み止めの内服、骨粗鬆症治療、コルセットによる2〜4週間の安静治療が必要です。横になっていれば痛まないことが多いですが、この間足腰が弱っていきます。また、骨折による痛みを我慢して生活に戻っても背骨は潰れた後に固まります。
ほとんどの方で痛みは軽くなりますが、数ヶ月以内に新たな脊椎圧迫骨折が生じやすく、なかでも約1割の方は遷延癒合という骨が固まらない状態となります。骨折部分が固まらないことで腰痛が続いたり、後弯という姿勢の異常による腰痛が残ってしまったり、腰の神経が障害を受け下半身の痛みや麻痺が起きたりします。こうなると身体に負担の大きな手術が必要になりうるので、それを防ぐためにその方の骨折形態に応じてBKP(Balloon Kyphoplasty:バルーン・カイフォプラスティ)による介入が望ましいと考えます。
BKPなら侵襲の少ない方法で、骨折後早期に痛みをとったり、背骨が潰れることの予防も可能です。手術に恐怖を感じるのは当然ですが、進行してより負担の大きい手術の適応とならないためにも、BKPの治療で済むタイミングを逃さないようにしていただきたいです。
BKPとは?
BKP治療の手術は全身麻酔をして行います。 ベッドにうつぶせに寝た状態で背中を2ヶ所(1㎝程度)切開します。先端にバルーン(風船)を付けた器具を背骨に入れて、風船を膨らますことで潰れている背骨の形をある程度もどすことができます。風船を抜いたあとにできた空洞にペースト状の骨セメントを注入し、15分程度でセメントが固まったら手術は終了です。
退院後はすぐに普通の生活に戻れます。ただし、コルセットを3ヵ月は装着していただき、強力な骨粗鬆症治療も必要です。手術した他の背骨に新しい骨折を起こす可能性があるためです。
メッセージ
骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折は、自覚症状がないものから入院が必要なものまで様々です。整形外科の中でも専門性の高い分野ですので、脊椎外科を専門とする医師や設備のある病院やクリニックを受診するのがお勧めです。
症状のあるなしに関わらず、一度ご相談していただければ予防から手術治療まで様々な選択肢の中から適切な治療プランをご提示させていただきます。
よくあるご質問
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Q1.手術にかかる時間はどのくらいですか?
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1ヶ所あたり、約30分ぐらいです。
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Q2.誰でも治療できますか?
- 症状の経過、持病の有無や術前の検査等を用いて総合的に判断しますが、身体への負担は脊椎手術の中では比較的少ないため、ほとんどの方は手術を受けることができます。
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Q3.どのような状態にBKPが有効ですか?
- 骨が固まっていない脊椎圧迫骨折に有効です。
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Q4.脊椎圧迫骨折はどうして痛いのですか?
- 脊椎圧迫骨折により骨が固まっておらず、骨折した骨の形の異常がある場合に、わずかな骨折部分の動きと姿勢異常が神経や背筋を刺激し痛みが誘発されます。
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Q5.どうしてBKPが痛みに有効なのですか?
- 骨折部分の形態異常をもとの状態に近づけ、わずかな骨折部分の動きを骨セメントを用いて抑えることで痛みを軽くすることができます。
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Q6.治療できない症状はありますか?
- 胸椎から腰椎以外の部位の骨折は治療の対象になりません。また、BKPでは腰痛や脚の痛み・しびれといった症状が良くならない、もしくはそれらの症状を予防できないと判断される場合は、BKP以外の治療をお勧めさせていただくことがあります。
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Q7.痛みが取れるまでにどれくらい時間がかかりますか?
- 数日の入院中に、日常生活に戻れる程度まで痛みが取れることがほとんどです。
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Q8.どんな副作用、合併症がありますか?
- 可能性は非常に低いですが、骨セメントの漏出(骨セメントが骨折の隙間から漏れ血管や神経周囲にはいると肺塞栓や神経障害を起こすことがあります)、他の脊椎圧迫骨折(硬い骨セメントと脆い骨粗鬆症の椎体の強度により他の背骨に負担がかかって、再骨折してしまうこと)、軽度〜重度のアレルギー(骨セメントに対するアレルギー反応)、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)、手術部位の感染症などがあります。
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Q9.治療後の生活で気をつける事はありますか?
- 退院後はすぐに普通の生活に戻れますが、コルセットを3ヵ月以上は装着していただきます。手術した他の背骨に再骨折を起こす可能性があるためです。可能な方は、強力な骨粗鬆症治療も併用します。強力な骨粗鬆症治療とは自己注射の薬剤が一般的ですが、どなたでも扱えることが多いです。また、注射方法の指導も当院でさせていただきますので、心配ありません。