人工股関節の術後に肉体労働はできる?人工股関節手術後の仕事復帰について
人工股関節の手術を受けることでそれまでの辛い痛みから解放され、旅行に出かけたり、スポーツを楽しんだり、今までできなかったことができるようになることも多いはずです。なかには、職場への復帰や肉体労働に従事する目標を持つ方も少なくありません。
この記事では、人工股関節の手術後、肉体労働や仕事に就く方へのアドバイスについてお伝えします。
人工股関節手術後、職場復帰できるまでの期間は?
人工股関節置換術の手術をうけたあと、どのくらいの期間で、どのくらいの仕事ができるようになるのか関心がある方は多いと思います。
一般的に、職場などでおこなう仕事は、事務職の人であれば、手術後2~4週程度、半日程度の立ち仕事であれば、4~6週程度、一日中の立ち仕事であれば、6~8週程度でできるようになります。
ドライバーの方など、車を運転する仕事の場合は、手術後2~3ヵ月程度、農業や漁業、建築、土木作業などの肉体労働に従事している方は、仕事や作業の内容によって異なりますが、目安としては手術後、3ヶ月~半年程度でできるようになります。【表1参照】
仕事の種類 | 人工股関節への負荷 | できるまでの期間 |
---|---|---|
事務職など主にすわっておこなう仕事 | 低レベル | 2~4週 |
すわるか立っておこなう仕事で、ときどき、歩く作業がある仕事 | 中レベル | 4~6週 |
歩いておこなう仕事で、ときどき持ち上げる作業がある仕事 | 中~高レベル | 6~8週 |
激しい肉体労働 | 高レベル | 3ヶ月以降 |
ただし、人工関節の状態や筋力の回復程度などには個人差があり、また施設や手術法によっても異なってきます。主治医に相談してからおこなってください。特に肉体労働の場合は、股関節に大きな負荷がかかり、人工関節のゆるみや摩耗(すり減ること)の原因となります。無理のない範囲で作業をおこない、定期的に通院することが重要です。
人工関節の耐久性の向上
人工関節は、寛骨臼の替わりとなるソケット(カップ)、大腿骨頭の替わりとなる骨頭(骨頭ボール)、関節軟骨の役割をするライナー(インサート)、大腿骨に埋め込むステムの4つの部品で構成されています。【図1参照】
一般的に、ソケットとステムは金属、骨頭とライナーは超高分子ポリエチレンやセラミックでできています。こうしたパーツを組み合わせることで、関節が滑らかに動くようになっています。【図2参照】
数十年前と比べ、現在では人工股関節の素材や耐久性は飛躍的に向上しており、患者様個人個人のライフスタイルを考慮した素材を組み合わせることで、手術後のさまざまな仕事や社会復帰が可能です。
手術前に、肉体労働に従事したい(従事する必要がある)希望を医師に伝え、適した素材や方法で手術を受けることが大事です。
手術後のリハビリは?
肉体労働に従事する方など、重い荷物を持ち上げたり、股関節を大きく曲げたり、ひねったりすることが多い仕事の場合、手術後のリハビリテーションをしっかりおこなう必要があります。
股関節の周辺だけでなく、足腰や体幹(頭と手足を除く胴体の部分)の筋肉の強化も必要です。入院中に指導されたトレーニングやストレッチなどを継続しておこないましょう。
筋力だけでなく、関節をやわらかくして、可動域(関節を曲げ伸ばしできる範囲)を広げる運動や、股関節にできるだけ負担がかからない体の使い方・姿勢・動作なども指導を受けておいたほうがよいでしょう。
人工股関節の術後に肉体労働をおこなう際の注意点
肉体労働に限らず、手術後は定期検診を受ける必要があります。一般的に、手術後3ヵ月、6ヵ月、1年後に検診を受け、人工股関節の状態を確認することが推奨されています。
そのあとも半年に1回は定期健診をおこない、人工関節のゆるみや摩耗が起きていないかなど、関節の状態をチェックすることが非常に大切です。
肉体労働に従事している場合、普段どのような作業をおこなっているか医師に申告して、股関節の状態を確認しながら労働を継続してもよいのか、中止した方がよいのかなど、慎重に経過をみていく必要があります。
まとめ
肉体労働は、仕事や作業の内容にもよりますが、関節に大きな負担がかかることが推測されます。本来、人工関節は激しい運動や作業をおこなうことを想定されていません。しかしライフスタイルの変化などにより患者様のニーズも多様化してきています。人工関節の素材や手術手技の進歩により、従来と比べ人工関節の耐久性は向上していますが、肉体労働や激しいスポーツは人工関節のゆるみや摩耗の原因となるため、定期的な検診が不可欠です。
ご自分の希望や何らかの理由で肉体労働をおこなう場合は、決して無理をせず、定期的に検診を受け、医師の判断に従いながら、安全におこなうことが大切です。