人工関節置換術の手術はどれくらい痛い?どれくらいの期間で痛みがなくなるの?術後の痛みについて解説
人工関節置換術の手術は術後どれくらいの痛みをともなうのでしょうか。また術後どれくらいの期間で痛みは軽快するのでしょう。人工関節置換術は、変形性関節症や関節リウマチなどで発生した痛みを劇的に改善する非常に有効な治療法です。しかし手術ですので、皮膚を切開したり骨を削ったりする操作をします。そのため手術直後は切った場所、手術部位に痛みを感じます。どれくらいの痛みがどの程度持続するのか、手術前に不安を感じる方も少なくないでしょう。今記事では手術にともなう術後の痛みについて解説します。
痛みを感じるメカニズムとは
痛みとは身体に警戒心を持たせることで、いろいろな危険から生命を守るために本能的に備わっている危険信号です。体内には神経が張り巡らされており、末梢神経にあるセンサー(侵害受容器(しんがいじゅようき))が刺激を感知すると、電気信号が脊髄を通って脳に伝わり「痛い」と感じます。これを「侵害受容性疼痛」といいます。また神経自体が障害されたり、神経の周囲に炎症が起こったりして感じる痛みを「神経障害性疼痛」といいます。さらに心理的ストレスにより、脳にトラブルが生じて感じる痛みのことを「心因性疼痛」といいます。
痛みのメカニズムは概ねこの3通りと考えられています。これらの痛みは通常、原因が取り除かれると約90%が数日~6週間以内に治まりますが、中には3~6カ月以上続き慢性化する場合もあります。
人工関節置換術の手術はどれくらい痛い?
まず大前提として、手術はどんな手術であっても多かれ少なかれ手術直後は痛みを感じます。胃の手術であっても婦人科の手術であっても麻酔から覚めたあとは痛みを感じるでしょう。しかし上記のように痛みのメカニズムが解明されるにつれ、痛みを抑える方法も進歩しています。
整形外科の人工関節の手術では、現在多くの施設で従来よりも効果的に痛みを緩和する方法を取り入れています。手術前の麻酔に入る段階から、また手術中にも神経障害を最小限に抑えるための工夫を行い、手術後もさらに痛みを感じないよう注射や飲み薬を数種類使用しています。
股関節と膝関節の人工関節の手術では、どちらかというと膝関節の方が手術直後の痛みを感じる方が多いようです。しかし前述のように従来よりも痛みを効果的に緩和させる方法が徐々にわかってきたため、手術が終わり麻酔がさめたあと、我慢できないほどの痛みを訴えることはほとんどなくなっています。少なくとも手術直後であっても、いわゆる『のたうちまわるような』痛みはないでしょう。重だるいような痛み、じーんとする痛みなどと形容される方が多いです。点数で表すと、全く痛みがない状態を0、我慢できない最大の痛みを10とすると、手術直後は4から5くらいの痛みを感じる方が多い印象です。そのような手術直後の痛みに対しても、前述したように各種の痛みどめを使用し、点数が0になるように治療しています。
人工関節置換術の術後、どれくらいの期間で痛みがおさまるか
人工関節置換術、特に膝関節の術後の痛みは手術当日から翌日にかけて痛みのピークがあります。これはまさに手術による皮膚切開や骨を削ったことによる手術部位の炎症によるものです。そのため炎症がおさまってくるにつれ、痛みは改善していきます。一般的に膝関節の術後の痛みは、1週間から10日前後で軽快するでしょう。その間も、前述のように数種類の痛み止めを使用し、痛みの緩和に努めています。従来と比べ、痛みの緩和に様々な方法でアプローチしているため、効果的な術後の除痛が得られます。
まとめ
今回は人工関節置換術の手術で、術後どれくらいの痛みをともなうのか、また術後どれくらいの期間痛みが持続するのかについて解説しました。
股関節と膝関節では、膝関節の方が痛みが強い傾向にありますが、痛みが発生するメカニズムの解明とともに、痛みを抑える方法も進歩しています。
従来とは異なり、術後に我慢できないほどの痛みを感じることはなくなっています。
現在もさらに痛みを抑える研究が続けられており、今後全く痛みを感じない時代が来るかもしれません。