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患者様向け情報

人工関節置換術を検討されている患者様へ、手術の概要から入退院の流れを解説

人工関節置換術は、変形性関節症などで軟骨がすり減り、痛みのために日常生活を送ることが困難となった方に対し、大きな福音となる非常に有効な治療法です。

しかし、症状の改善が見込めるとわかってはいても、自分の体にメスを入れることを不安に感じたり、手術をうけること自体が怖いという方は多いでしょう。

そのため、手術を検討されている方にとって手術の内容やリスク、入院から退院までの流れを事前に理解しておくことは、手術に対する不安を解消する意味においても重要なプロセスです。

この記事では、人工関節の手術を検討されている方へ向けて、人工関節置換術の概要や入院から退院までの流れをまとめました。

具体的に記事を読むことで、次の内容が理解できるようになります。

  • 人工関節置換術がどのような手術なのか理解できる
  • 人工関節置換術を受けるタイミングを理解できる
  • 人工関節置換術のリスクを理解できる
  • 人工関節置換術の術後の経過を理解できる

ぜひ、最後まで読んで参考にしていただけますと幸いです。

人工関節置換術とは

人工関節置換術は、加齢やけが、病気などで傷ついてすり減った関節を人工関節へ置き換える手術です。

一般的に年齢を重ねると、多かれ少なかれ関節の軟骨はすり減っていきます(摩耗)。

生活歴や遺伝的体質などの背景により、個々人で軟骨の摩耗の程度は違いますが、摩耗が高度になると骨の変形が進行します。最終的に変形性関節症へと進展します。

その他に関節リウマチや大腿骨頭壊死症などでは、病気特有の症状から関節が変形、破綻してしまう現象も起きます。

人工関節は、関節の機能が破綻した場合、他に有効な治療法がない場合の最終的な関節再建方法として、非常に有効な治療手段として知られています。

人工関節置換術の効果

人工関節置換術は非常に有効な治療法で、次のような効果があります。

  • 関節の痛みが改善し、辛い痛みから解放される。
  • 関節の変形が矯正され、関節が安定することにより歩行しやすくなる。
  • 痛みを感じていた関節が安定するため、他の関節の負担が軽くなる。(例えば膝に痛みがある方は、腰や足首に負担がかかっていることが多いです。)
  • 活動範囲が広がり、仕事や友人との交流、趣味など今まで以上に社会参加できるようになる。

特に人工関節置換術は痛みの原因となる傷ついた軟骨や骨などをすべて取り除くため、徒手療法や物理療法、薬物療法などの保存療法と比較して、関節の痛みを劇的に改善させる効果が期待できます。

人工関節置換術の適応となる対象疾患

人工関節置換術は、主に次のような疾患を対象におこなわれます。

  • 変形性関節症
  • 関節リウマチ
  • 骨壊死症
  • 外傷

基本的に人工関節置換術は患者様の任意(希望)によっておこなわれます。

人工関節置換術をうける適正な年齢とは

人工関節の寿命は、一般的に20〜30年といわれています。
手術を受けるタイミングは、年齢から逆算して検討する必要があります。
例えば平均寿命を85歳とした場合、人工関節の寿命を考慮すると、適正年齢は65歳前後が理想的といえるでしょう。

このように逆算して考える理由は、一般的に人工関節置換術は再手術の難易度が高く、術後のリスクも高くなる傾向にあるからといわれてきました。しかし現在、手術手技や手術器械の改良、麻酔技術の進歩などにより施設によってはそれほど困難なことではなくなってきていることも事実です。手術をうける際は担当医に確認してみるとより安心でしょう。

人生の生きがいを尊重して、適正年齢より早めに手術をおこなうケースも増えている

現代の人工関節置換術の適正年齢は65歳前後といわれています。

しかしその一方、65歳まで関節の痛みに耐え続ける人生が嫌という人も少なくありません。
特に30代、40代の働き盛りで社会の中心的役割を担っている年代の方は、関節の痛みのために人生の最も充実した時間を無駄にしてしまう可能性があります。やりたいことを諦めるのはこの年代の方にとって大変な苦痛でしょう。

そのため、最近では65歳という適正といわれる年齢を待たずに、自分の人生を楽しく過ごす、充実した人生を送ることを優先し、30代、40代でも他に有効な治療法がない場合、人工関節置換術を選択する方も増えています。

ただし前述のように人工関節の寿命について十分理解し、再手術の可能性があることを了承される必要があります。

人工関節置換術の合併症

人工関節置換術を含め、手術には合併症のリスクが存在します。

人工関節置換術の主な合併症は、次のようなものが挙げられます。

  • 細菌感染
  • 人工関節のゆるみや摩耗
  • 人工関節周囲骨折や脱臼
  • 深部静脈血栓症

細菌感染

人工関節は人工物のため、細菌に対する抵抗力がありません。ひとたび感染してしまうと、症状が落ち着くまで複数回の手術が必要になることもあります。特に術後数年、順調に経過している方でも虫歯や水虫などから細菌が血流に乗って人工関節に感染してしまう可能性があります。そのため、日頃から体調管理や虫歯などは放置せず治療するようにしましょう。

人工関節のゆるみや摩耗は早めの発見を

人工関節のゆるみや摩耗は無症状で経過することがほとんどです。ご本人が気付かないうちに摩耗が進行し、周囲の骨が徐々に溶けていきます。痛みなどの症状が出現したときには骨の大部分が溶けていることも稀ではありません。そうなると再手術の難易度は上がります。このような理由から定期的な受診で人工関節に異常がないか確認することは非常に重要です。摩耗やゆるみがあっても早期に発見されれば再手術は現在では施設によりそれほど困難ではありません。

人工関節周囲骨折や脱臼

手術直後の歩行が安定していない時期などに転倒すると、特に骨粗鬆症がある方は人工関節周囲骨折を起こす可能性があります。この骨折は不安定であり、多くは手術治療が必要となります。骨粗鬆症がある方は早めに治療を開始しましょう。

また手術方法によっては脱臼肢位といって、脱臼しやすい姿勢があります。このような場合は一時的、または永久的に脱臼肢位をとらないよう注意しなければなりません。

深部静脈血栓症による肺塞栓症、脳梗塞、心筋梗塞の可能性がある

人工関節置換術特有の合併症ではなく、腹部手術や婦人科手術でも起こり得る合併症のひとつですが、生命に関わる重大な合併症なのでここで解説します。

深部静脈血栓症は、脚の血管に血の塊(血栓)ができてしまう病気です。
血栓症の怖いところは、血流に乗って血の塊が移動してしまうことにあります。
脚の血管は肺や脳などの血管と比較すると太い血管のため、できあがる血栓は大きいものになります。

もし、深部静脈血栓が血流に乗って移動してしまうと、肺や脳、心臓などの細い血管のところに詰まってしまいます。

すると、肺塞栓症や心筋梗塞、脳梗塞などの命に関わる病気につながってしまうため、深部静脈血栓症の予防に細心の注意を払う必要性があります。

具体的には、理学療法士による血栓予防運動、フットポンプの使用、血の塊ができにくいように血流がサラサラになるお薬を内服する、血栓予防の専用の靴下を履くなどの処置をおこないます。

人工関節置換術の入院から退院までの流れ

人工関節置換術を受ける場合、基本的に入院が必要になります。
入院から退院までの流れを解説します。

人工関節置換術に必要な入院期間の目安

一般的に人工関節置換術の入院期間は、施設によって異なりますがおおよそ1〜4週間程度です。2週間前後の施設が多いでしょう。

術後は、合併症のリスクに注意を払いながら、退院に向けてリハビリテーションをおこないます。

退院の目安は、患者様が身の回りの日常生活動作(着替えやトイレ、階段昇降、屋外歩行など)が自立しておこなえるようになっていることが1つの基準になります。

術後はリハビリテーションで日常生活に復帰する身体能力を取り戻す

リハビリテーションは、人工関節置換術の術後から最短で翌日に始まります。

リハビリテーションの流れでは最初に手術の傷に注意しながら、痛みの軽減や関節の動きが硬くならないように動ける範囲で、手術をおこなった患部を動かしていきます。

その後、可能であれば理学療法士や作業療法士のサポートを受けながら、歩行練習や筋力トレーニング、日常生活に必要な動作の練習をおこないます。

リハビリテーションのメニューは、担当の理学療法士や作業療法士が日常生活で必要な動作や体力などを客観的に評価して、プログラムを考案します。

術後の生活で不安なことがあれば相談をおこない、個々のニーズに応じたリハビリテーションを進めていくことも可能です。

まとめ

今回、人工関節の手術を検討している方へ向けて、人工関節置換術の概要や入院から退院までの流れをまとめました。

人工関節置換術は、変形性関節症などで軟骨がすり減り、痛みのために日常生活を送ることが困難となった方に対し、大きな福音となる非常に有効な治療法です。

しかし、多くの方は手術をうけることに不安を感じ、躊躇するはずです。どのような手術であるのか、手術によってどのような効果があるのか、どんな合併症があるのか、入院生活はどのようになるのかなど正しい知識を得ることはとても重要です。

今記事を参考に人工関節置換術に対して理解を深め、疑問がある際には専門医と相談を行いながら手術を検討していただければと思います。